このチラシの スゴさが ”インパクト” ではない本当の理由

スゴイチラシだと思うんです。このチラシ。

めちゃくちゃすごいインパクトじゃありません? 強烈ですよね!?でも、このチラシが本当にすごいのは「インパクトの強さ」ではないと考えています。

※先に言っておきますけど、このチラシのインパクトがすごいからって、表面的にマネしても意味ないですよ。マネをするなら要所をマネしましょうね。

こんにちは!しかけデザイナーのまきやさねゆきです。このチラシは豊橋の売れる看板屋さん・市橋求さんのチラシです。制作を担当されたのは横浜デザインスタジオ(株式会社ライズサーチ・社長は内田さん)です。両者とも仲良くさせてもらっている(とぼくが勝手に思っている)ので、このチラシのスゴさを勝手に解説しちゃいます。

めちゃくちゃインパクトのあるチラシですよねぇ。うん、映画のポスターみたい。既視感のあるデザインと依頼主を組み合わせた違和感を使ったしかけがステキです。見た瞬間から目と心が惹かれます。ほんとスゴイです。

でも、このチラシの本当のスゴさはデザイン性ではないと思ってるんです。ぼくは。このインパクトのあるデザインではないと思う。むしろこのデザインにいたる思考プロセスというか設計がスゴイと思う(実際のプロセスは知らないですけど、チラシの利用場面設計がほんとすばらしくて)。

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依頼主のスタンスと関係性を活かした設計

このチラシがどのような場面で利用されて、どんなことが起きるといいか(依頼主にメリットががあるか、チラシの効力が発揮されるか)がすごく計算されて設計されていると思ったんです。市橋さん(依頼主)のご商売に合わせて設計されているんです。

市橋さんは人とのつながりをとっても大事にされる方です。人の好き嫌いもあるとハッキリと言っている人です。だから「相性のいい方」とつながれることが、市橋さんにとってもきっとプラスになります(これはボクが想像していること)。誰でもいいからたくさんの人に知られたい、とにかく多くの受注をしたいという人ではないんです(そこまでは言い過ぎかな…でも、ホント人を大事にする方なんです)。

そういう市橋さんのスタンスと、周りの方々との関係性を見事ついて設計をされています。市橋さんは豊橋のご商売人さんの中でリーダー的な存在で、たくさんの方の商売繁盛をサポートしているし、すごく人望が厚い方です(間違えた、”ものすごーーく人望が厚い方”でした。)。なのに「いじられキャラ」でもあります。市橋さん自ら積極的にアホでドジなエピソードをSNSで投稿していることもあり、周りの商売人さんも市橋さんをいじることでコミュニケーションを取っている。これがまた絆を深めているんだと思う。


利用場面と、起こる会話が設計されている

このチラシはどう利用されるか。おそらくですがポスティングや折り込みでばらまくものではありません。知っている人づてで渡されるチラシだと思います。その性格が強い。仲良くされているお店の壁に一枚貼ってもらったり、そのお店のお客さまに渡してもらったり。また仲良くされている商売人さんが「ステキな看板屋さん知らない?」と相談された時に「ならこの人はどう?」って時に渡すチラシです。おそらく。

市橋さんをすでに知っている人を通じて、初めての人に伝わるチラシ(もしくは市橋さんの名前くらいは知っていた人が、もっと詳しく知るチラシ)です。

たとえば整体院さんにこのチラシが置かれているとしましょう。整体院さんに来院されたお客さまはこのチラシに目が向きます。なんせ目を引くインパクトがあるから。ここでインパクトの大きさが効きます。

そしてこんな質問が想像されます。「すごいね、このチラシ!」「この人って、どんな人?」「誰ですか?この方」こんな質問、ついしたくなりません?この質問が起きることが設計されているんです。すごい。

その質問に対する答えはどうでしょう?整体院のオーナーさんが知っている市橋さんのエピソードが語られます。それまでもSNSやリアル場面を通じて信頼関係を深めていたので、それがしっかりと伝わります(おそらく”いじり”も含めて)。市橋さんの魅力が伝わるんです。これまでの関係性がある方を通じて渡されるチラシだからこそ、活きるんです。それがハッキリと設計されている。ほんとスゴイ。

もう一つ付け加えておきますね。このチラシをお店に置く側はどうでしょうか?「市橋さんの宣伝をしている」という意識でしょうか?違うと思うんです。「話題が広がるネタを手に入れた」という感覚なんじゃないかなと思うんです。だってお客さまと盛り上がれますもん。その点でも売込み中心のチラシとは違いますね。

このチラシに触れる全員がプラスになるように設計されているんです。すごいどころか恐るべしです。


スゴイでしょう?

どうでしょう?このチラシのスゴさ、伝わりました? インパクトの強さが印象的なんですけど、それに至る「設計」が一番スゴイ。チラシをつくるならここからやらなきゃですよ。

いきなりデザインを考えたり、いきなりキャッチコピーを考えちゃダメ。いきなり値引き率を考えるのもダメ。そのチラシで何が起きるか(起こるようにするか)を想像して設計する。チラシ主の状況やスタンスに合わせて設計する。これがめちゃめちゃだいじ。そのお手本のようなチラシでした。ほんとスゴイです。

尊敬する2人の社長(市橋さん、内田さん)の魅力がこんな風にかけ算されてできたチラシ。素敵だし、ぼくも自慢したくなっちゃいました。

ぼくもチラシの企画設計をする人なので(デザインはデザイナーさんに任せます。今回の制作担当・内田さんにもよく依頼させてもらってる)、このチラシには「やられた感」が半端ないっす。すごい。悔しいくらいだけど、ほんとスゴイから紹介&解説させてもらいました。勝手に。

やっぱりチラシというか販売促進の企画を丸ごと含めてなんですが、大きな視点での設計ってだいじなんです。そういうことをしっかりやってくれる方は素晴らしいし、そういう仕事が日本に拡がっていくといいなぁって思ってます。ぼくも一生懸命やるぞ!うん(●´ω`●)

参考になりました?

 

■参考

・豊橋の売れる看板屋さん(市橋さん) https://www.toyokanban.com/

・横浜デザインスタジオ(内田さん)https://manseki.info/

 

 

 

■書いた人…気になるづくりの専門家・まきやさねゆき(Twitter